肝臓
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原発性肝癌の臨床病理学的研究
肝硬変の長期予後観察例における肝癌の発生について
小林 健一熊谷 幹男亀田 正二杉本 立甫鈴木 邦彦西邨 啓吾加登 康洋杉岡 五郎服部 信武内 重五郎
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1977 年 18 巻 7 号 p. 468-473

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抄録

今回われわれは肝癌の病態生理の解明を目的として,肝硬変の長期予後観察例について,主としてHBs抗原と肝機能検査成績の面から検討を加えた.観察対象は最近14年間に当科に入院し,肝硬変と確診後少なくとも3年以上予後を観察し剖検しえた20症例である.20例のうち肝癌の合併は10例(50%)にみられ,死亡までの期間は最長9.5年,平均5.5年であった.肝癌の合併をみなかった残り10例の予後観察期間は最長10年,平均5.0年であった.肝癌合併例のうちHBs抗原は検索例8例中6例(75%)の高率に陽性であり,肝癌非合併例10例では2例(20%)のみ陽性でその差は有意であった.肝機能検査では,肝癌合併例10例中4例で経過観察中少なくとも1年以上,血清トランスアミナーゼ活性値,血清膠質反応ともに正常範囲内にあった.
以上よりB型肝炎由来と思われる肝硬変と肝癌は密接な関連を有すると考えられる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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