肝臓
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原発性肝癌の病理形態学的研究
肝細胞癌の胆道内発育について
熊谷 保也
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1979 年 20 巻 2 号 p. 157-163

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抄録

肝細胞癌(HCC)が胆道内に浸潤発育し,黄疸やhemobilia等を初発症状としたり,経過中に閉塞性黄疸の様相を示した10例の剖検例を経験したので臨床病理学的検討を行った.症例は平均年齢58.8歳,性差は〓:♀=8:2である.全例肝硬変を合併している.腫瘍血栓は全例肝内門脈内に,6例には肝静脈内にも認められた.教室の肉眼分類と対比すると浸潤型5例,混合型5例で膨張性発育を示すHCC症例は1例も無い.このうち初発症状に閉塞性黄疸を示したのは3例で,いずれも剖検にて肝門部に腫瘍並びに凝血塊による胆管の閉塞が確認された.残り7例は入院経過中に黄疸を示したもので,直接癌組織が胆嚢壁へ浸潤した1例を除くと,肝門部或いは末梢で胆管壁を破り胆管内に発育した症例がそれぞれ3例ずつであった.hemobiliaが直接死因となったのは1例であるが,凝血塊並びに腫瘍塊は他の9例に認められ,いずれも肝管よりVater乳頭部までに存在し,閉塞性黄疸との関連性が注目された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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