1980 年 21 巻 10 号 p. 1295-1303
昭和53年春,大垣市近郊の神戸町の中学生を中心に発生したA型肝炎の臨床経過について,入院加療した50例を中心に検討を行った.発熱・悪心・全身倦怠等の自覚症状はほとんどの例で1週間以内に消失した.肝腫大が3カ月以上持続したものが25.0%にみられたが,無黄疸例にはみられなかった.S-GOT, S-GPT, IgMの正常化に要した日数は黄疸群において最も長かった.病初期γ-GTPが高値であった例は経過が長びくとの傾向をえた. TTTの正常化が遷延したり再上昇を示した例は血清ビリルビン,S-GPT, IgMの正常化に長期間を要した. ALPにはこうした傾向はみられなかった.HA抗体価は発症後2週目と6カ月目にピークを有する2峰性の変動を示し,最初のピークはIgMのピークに一致した.ほとんどの例で経過は良好であったが,血清トランスアミナーゼの再上昇が4例,著明な黄疸を示したのが2例みられた.