肝臓
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続発性Hemochromatosisの1女性例―進展過程を中心にして―
安部 明郎後藤 慎一沓掛 伸二相沢 良夫永森 静志島野 毅八郎浅尾 武士
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1980 年 21 巻 7 号 p. 890-896

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抄録

鼻出血,性器出血を繰り返し再生不良性貧血の診断の下に2年半の間に約100lの輸血と両側卵巣にレントゲン照射を受けた44歳の女性,月経閉止数年後から拇指関節の疼痛を訴えていた.約10年後,血小板減少と出血傾向に対して副腎皮質ホルモンの療法が行われたが,その1年後,黄疸で入院.肝生検ではHemosiderosisを伴う慢性活動性肝炎であった.その後も入院を繰り返すうちに糖尿病を併発し,皮膚の色素沈着も現われ,13年後には臨床的にも生検でもHemochromatosisであることが確認された.さらに両側指趾の関節腫脹変形が顕著となり,Hemochromatosis関節症が疑われた.大量輸血後18年で消化管出血のため死亡.組織学的診断でHemochromatosis関節症の所見の1つである関節滑膜の鉄沈着が確認された.本例の進展には慢性の血液疾患の基盤の上に大量の輸血,卵巣照射による月経の閉止,輸血後肝炎の慢性化が要因として作用していたであろうことが論じられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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