抄録
チンパンジーによる実験的急性B型肝炎に於ける肝細胞の微細構造の変化を経時的に観察した.その結果HBsAgが血中に出現してからsGPT上昇前までに於ける期間は,散発的な所見として小胞体やミトコンドリアを主とした変化が単細胞性に観察された.sGPT上昇直後には類洞内のリンパ球遊走が多くなり小胞体,ミトコンドリアの変化がより多くの肝細胞に認められる様になるが,小葉内に於いては依然として散発的でった.またこの時期に滑面小胞体の増生やマイクロボディの増加も認められた.この後sGPTは急激に上昇し最高値に達した時点では,ribosome離脱を伴なった小胞体の拡張を中心とする肝細胞の変化が,ほぼびまん性に認められた.
HBVとしては発症前に,少数の肝細胞核内に25~27nmからなるHBcore粒子を認める事ができた.小胞体内のfilamentousな構造物は認めることが出来なかった.