1983 年 24 巻 3 号 p. 339-343
症例は51歳男子で,青年期から時々,右上腹部から背部にかけて絞めつけられるような痛みを覚えていた.画像診断にて肝後上区域の肝内胆管の拡張があり,肝内部において後区域の肝内胆管が右肝管に合流する部分に閉塞が認められた.この患者はその診断以前に胆のう癌のため単純胆のう摘出術,そして原発性胆管結石症に対して乳頭形成術が施行されたが,いずれの場合にも肝門部には炎症,腫瘍性病変は認めなかった.これら2回の手術後も右上腹部痛は変らないため肝右葉切除を施行したところ,その後上記腹痛は全く消失した.したがってこの腹痛は肝後区域の肝内胆管のsegmental obstruction Vこよる胆管内圧の上昇に起因したものと考え,またこの閉塞は先天的な胆管閉塞と考えられた.