1985 年 26 巻 4 号 p. 421-427
肝障害の経過に及ぼすカテコールアミンの作用を,雄性ラットを用い以下の群について検索した.(I) CCl4連続投与群,(II) CCl4と共にノルエピネフリン(NE)を投与した群,(III) CCl4と共にエピネフリン(EP)を投与した群.(I)群では経過と共に硬変肝へ進行し,同時に肝の萎縮が著明で全例15週迄に肝不全状態で死亡した.肝微小血管構築面では,血管壁の不整及び末梢枝の潰れ,消失等,微小循環系の擾乱が認められた.これに反し(II)群では肝萎縮は抑制され,肝血管造影上血管増生像が見られ,58週に至る迄死亡例は無かった.組織学的には,偽小葉結節内の類洞は拡張していた.(III)群も(II)群と同様の過程を辿り,35週の観察期間中死亡例は無く,血管造影所見,組織学所見も略々同じ結果であった.斯様なNE, EPの障害肝,殊に微小循環系への作用は,正常動物に対するものと全く様相を異にしており,生体の恒常性維持に与っていることを示唆した.