肝臓
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輸血後肝障害の長期追跡調査研究
吉野 泉飯島 敏彦今井 康允寺野 彰
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1986 年 27 巻 12 号 p. 1665-1669

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抄録

肺結核男子患者で,手術時に輸血を受けたものと手術も輸血も受けなかったものについて20年間以上追跡調査した.1960年より1964年の間で手術時に輸血を受けた91例を輸血群とし,手術も輸血も受けなかった77例を非輸血群とした.約20年経過後の肝機能成績ではHBVマーカーの陽性率に差はみられず,輸血群はZTTが有意に高値を示し,また輸血後に急性肝障害を発症した例ではGPTとZTTが有意に高値を示した.肝疾患による死亡例は輸血群では6例あり,そのうち5例には輸血後急性肝障害の既往があり,非輸血群ではなかった.肝疾患による死亡を相対危険度として一般人口と比較すると,輸血群では原発性肝癌が13.3,肝硬変が4.0を示し,さらに輸血後急性肝障害発症群では原発性肝癌が25.9,肝硬変が12.1と高値を示した.以上より,輸血群,特に輸血後急性肝障害を発症する例は原発性肝癌や肝硬変の高危険度群であることが明らかとなった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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