肝臓
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ラット粗大結節性硬変肝の悪性進展に及ぼす黄体ホルモンの影響
悪性化促進因子としての意義
石井 公道苅部 ひとみ藤田 芳邦柴田 久雄岡部 治弥佐々木 憲一奥平 雅彦
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1986 年 27 巻 12 号 p. 1678-1683

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抄録

粗大結節性硬変肝の悪性進展に及ぼす黄体ホルモンの影響を実験的に検討した.Wistar系雄性ラットに0.06% 3'-Me-DAB混入飼料を3週間投与し,次いで通常食に切換えると共に四塩化炭素を14週間皮下注射して,非可逆性の粗大結節性硬変肝を作製した.ここで,I)無処置群,II)カプロン酸ヒドロキシプロゲステロンを投与した群,の2群に分けて,以下経時的に検索した.I群では偽小葉結節の大きさや性状に著しい変化は見られず,病理組織学的には過形成結節形成に留まって,26週の観察期間中明らかな悪性腫瘍の発生は認められなかった.II群では偽小葉結節の大きさが増大して,その内部の血管構築像は粗血管状態から血管新生・増生の過程を辿り,肝細胞腺腫の発現を経て,39匹中9匹(23%)に肝細胞癌が惹起された.以上より,黄体ホルモンは粗大結節性硬変肝の悪性進展に対して促進物質として作用することが強く示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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