肝臓
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胆管細胞癌,肝細胞癌,胃癌の3重複癌の発生をみた
トロトラスト沈着症の1例
鴨川 由美子林 直諒喜多島 聡久保井 宏栗原 毅進藤 仁山本 和夫田中 精一武藤 晴臣高崎 健小林 誠一郎小幡 裕豊田 智里
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1987 年 28 巻 12 号 p. 1644-1649

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抄録

トロトラスト沈着症(以下ト症と略)は高率に発癌をみることで知られているが今回我々はト症にも稀な胆管細胞癌,肝細胞癌,胃癌,の3重複癌の発生をみた症例を経験したので報告する.症例は70歳,男性.黄疸を主訴として来院.昭和16年下肢骨折時トロトラストによる血管造影を施行され,昭和58年より肝障害を指摘されていた.入院時,肝腫大,黄疸,CEA,AFPの上昇を認めた.又腹部単純写真では,肝,脾,上腹部リンパ節に著明なトロトラスト沈着を認めた.画像診断にて肝左葉外側区域に境界不明瞭な腫瘤を認め,肝生検にて胆管細胞癌と診断した.同時に胃透視にて噴門部にBorrmann 1型の胃癌を認めた.以後黄疸進行しPTCD施行したが,感染症を併発し死亡した.剖検にて肝左葉の胆管細胞癌と肝右葉後区域から肝門部にかけ索状型肝細胞癌,噴門部乳頭状胃癌の3重複癌が確認された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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