1987 年 28 巻 9 号 p. 1157-1163
慢性肝炎の経過中に,劇症肝炎に相当する肝不全症状が出現し,1回の急性増悪で,肝硬変に進展する症例の存在を証明した.急性増悪の程度は,T. bilirubin 8.3から50.5mg/dlで,平均26.7±16.3mg/dl, GOT 1,053±943IU/l,ヘパプラスチンテスト10%から23%で平均16±4.7%であった.治療としては血漿交換療法を5例中3例で施行した.急性増悪前,中で,全例IgM型HA抗体陰性で,B型肝炎の3例全例で,HBe抗体陽性にもかかわらず,DNA-pの上昇を認め,δ抗体は陰性であった.急性増悪後の腹腔鏡,肝生検では全例に亜広範性肝壊死を認め,5例中4例で,肝予備能が極度に低下した壊死後性肝硬変に進展していた.また急性増悪後半年以上の経過観察をした3例中2例に,食道静脈瘤の出現を認めた.