1988 年 29 巻 1 号 p. 71-76
肝細胞癌(肝癌)剖検例550例のうち,肉腫様変化を伴う53例(9.6%)の臨床病理学的検討を行なった.肉腫様変化を示した肝癌は近年増加傾向にあり,抗癌剤one shot療法・肝動脈塞栓療法などの積極的療法がその一因と考えられた.臨床的には通常の肝癌と大きく異ならないが,病理所見では肉眼的に浸潤型や肝外発育型が多いことが特徴的で,組織学的に肉腫様部は類洞性増殖を示していた.また,肝外転移が血行性転移81%(p<0.05),リンパ行性転移62%(p<0.01)と通常の肝癌に比べ高頻度で広範囲であった.肉腫様変化の発現機序として以下のことが考えられた.抗癌療法などの結果,癌細胞のphenotypeに変化が起こった.または,heterogeneityを伴う癌細胞のうち肉腫様変化を特徴とするcloneが優位を占めるようになった.