1989 年 30 巻 10 号 p. 1491-1498
正常肝と悪性腫瘍患者の肝におけるglutathione S-transferase (GST)のアイソザイムパターンを比較し,さらに塩基性アイソザイムの免疫組織化学的検討を行った.アイソザイムの同定はchromatofocusingで溶出される等電点に基づき,免疫組織化学は酵素抗体法によった.正常肝(11例)ではアイソザイムC1, C2, N1の出現率が高く,A1は認められなかったが,悪性腫瘍患者のうち消化管癌肝転移例(8例)ではC2, N1の出現率は低く,A1が高率に認められた.肝由来のアイソザイムA1と胎盤由来のGSTはchromatofocusingによる等電点,電気泳動による分子量ともに相違し,互いに異なる分子種であることが明らかにされた.アイソザイムC1, C2, A1のいずれとも交差性を示す抗C2特異抗体を用いた免疫組織化学では,原発性肝癌(3例)および転移性肝癌(7例中6例)の肝腫瘍部にはGSTは陰性で,非腫瘍部の陽性所見には個体差がみられた.