肝臓
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超音波ガイド下エタノール注入療法後手術を施行した腫瘍径7~8cmの肝細胞癌の2例について
清水 元茂鵜浦 雅志小林 健一服部 信泉 良平野々村 昭孝松井 修一
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キーワード: 肝細胞癌, 被膜外浸潤
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1989 年 30 巻 7 号 p. 811-818

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抄録

手術前に超音波(USG)ガイド下エタノール注入療法(PEIT)を施行した腫瘍径7~8cmHCC 2例において,その病理組織像を検討し,比較的大型のHCCにおけるPEITの有用性と問題点について検討した.径7cmのHCCに対し17回計130ml,径8cmのHCCに8回計60mlの純エタノールを注入した結果,切除標本では2例とも大部分が完全壊死で,腫瘍細胞は一部の被膜近傍に認められるのみであった.また,腫瘍残存部に被膜内外浸潤を認めたが,壊死部では被膜内外浸潤も認められず,このため症例1の手術所見はTW (+)とされたが,組織学的にはtw(-)と評価され,術後1年の現在再発を認めていない.一方,PEIT施行時,USGでの腫瘍残存部位の同定に問題が残されたが,炭酸ガス注入法等の利用により克服しうるものと思われた.比較的大型のHCCに対してもPEITは有効であり外科手術前の補助的手段あるいは他の療法との併用手段の一つとなる可能性が示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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