1991 年 32 巻 12 号 p. 1163-1168
症例は75歳,男性.1983年4月左上腕の疼痛を訴え入院.左上腕骨に骨折及び腫瘤を認め,腫瘤部針生検の組織所見,AFP高値(14,000ng/ml)から肝細胞癌の骨転移と診断し,左上肢切断術を施行.腹部エコー,CTではSOLは指摘できなかったが,血管造影にて右葉にtumor stainが疑われ,one shot療法(MMC 20mg)を施行.AFP値は低下し,1984年5月及び12月にもone shot療法(MMC 20mg)を2回施行した.その後は,AFP値も低下が持続し,新たな骨転移巣も出現しなかった.しかし,1987年2月に肝に新病巣が出現し,その後TAE療法を2回施行した.1990年1月14日死亡.死因は腫瘍死であった.骨転移発見後集学的治療により6年9ヵ月の長期生存期間が得られた肝細胞癌例を経験したので報告した.