肝臓
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肝細胞癌の格子線維構築特性についての病理組織学的検討ならびに画像解析法による定量的評価
金子 聡
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1992 年 33 巻 12 号 p. 938-946

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抄録

肝細胞癌(以下HCCとする)の格子線維構築特性を検討するために,HCC 45例,正常肝10例,硬変肝5例の計60例について鍍銀染色により病理組織学的に検索した.正常肝では肝細胞相互間に入り込むように存在する鉤状線維(hook-shaped reticulin fiber)の存在を初めて指摘した.この線維は肝硬変ではやや減少し,HCCではさらに減り,かつ分化度の低下と比例して減少していた.さらに,HCCの腫瘍細胞索を取り巻く格子線維には,連続性の低下,走行の不整および太さの不均一性等の特色に富む変化を認めた.また,HCCでは非腫瘍部に比して格子線維が少ないという従来からの経験を検証するため,格子線維を太さにより4種類に分け,一定面積内の夫々の分布密度や腫瘍細胞索周囲長を定量的に計測し,HCCが低分化になるに従いそれらが減少していることを確かめた.以上から,格子線維構築はHCCの分化度を示す指標となることが示唆された.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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