1995 年 36 巻 3 号 p. 139-143
ラット肝より伊東細胞を分離・培養し,time-lapse VTRで伊東細胞の遊走と分裂過程を連続撮影し,増殖と遊走に及ぼすbFGFの影響を検討した.time-lapse VTRによる観察では伊東細胞の自発的遊走が見られた.その際,細胞は進行方向に偽足を突出し,それに伴って反対側の偽足は短縮し,アメーバ様運動を示した.遊走の速度は対照群では6.4μm/hであり,bFGF群では濃度依存的に1.35~2.6倍有意に促進された.また細胞の分裂も観察され,分裂時には細胞のすべての偽足が短縮し,培養皿から剥離し球状になった後に分裂し,二つの小球になり,その後徐々に培養皿に接着して伸展した.分裂に要する時間は約1時間であった.bFGFは伊東細胞の遊走と分裂増殖を有意に促進した.肝線維化局所への伊東細胞の集積にはbFGFが関与する可能性が示唆された.