肝臓
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一時的にサイクロスポリンが奏効した原発性胆汁性肝硬変(CAH-PBC混合型)の1例
一木 康則下田 慎治松井 美詠子林田 一洋工藤 二郎中村 稔井上 孝利平田 泰彦石橋 大海
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1995 年 36 巻 6 号 p. 386-391

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抄録

予後不良とされる慢性活動性肝炎を伴う原発性胆汁性肝硬変(CAH-PBC混合型)の症例の発症から死亡までの8年間の経過を追跡し得たので,試みた治療の効果を併せ,その経過を報告する.症例は40歳女性.32歳時に検診にて肝機能異常を指摘された.2年後,妊娠7ヵ月時に皮膚掻痒感が出現し,出産後に黄疸も出現した.抗核抗体,抗ミトコンドリア抗体陽性で,IgG, IgMが高値を呈した.肝生検にて胆管の変性・壊死像に加え,慢性活動性肝炎の像を認めた.プレドニゾロンの投与にて肝炎の所見は一旦鎮静化した.その後コレスチラミン,UDCA,リファンピシンを投与したが効果は一時的であった.サイクロスポリンでは一時的に効果が得られたが,中止後次第に病状は悪化し,40歳にて死亡した.免疫学的には抗M4抗体陽性で,抗PDC抗体は強陽性を呈した.副腎皮質ステロイド剤は病初期には有効であったが,末期には無効であった.サイクロスポリンは生化学的,免疫学的データの改善に有効であったが,UDCAの効果はみられなかった.リファンピシン,コレスチラミンは掻痒感の改善に一時的に有効であった.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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