肝臓
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ステロイド治療によりHCV-RNAの陽転化を認めた自己免疫性肝炎の1例
高橋 健文佐野 暢哉本田 浩仁伊東 進
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1996 年 37 巻 5 号 p. 276-280

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抄録

ステロイド投与により肝機能の改善を認めたものの,HCV-RNAが陽転化したAIHの1例を経験した.症例は49歳,男性.平成4年に第二世代HCV抗体陽性を指摘されるも放置されていた.平成6年6月中旬より全身倦怠感が出現するとともに肝機能の増悪を認め,慢性C型肝炎の急性増悪を疑い治療を開始した.トランスアミナーゼ活性の低下は認めたが,総ビリルビンおよびγグロプリンの著明な増加を認めた.血液検査にて抗核抗体および,IgGは著明な高値を示し,肝生検組織所見ではAIHが強く疑われた.さらに分岐DNAプローブ法およびPCR法にてHCV-RNAが陰性であったことよりAIHと診断し,ステロイド治療を開始した.肝機能は徐々に改善したが,その後のウイルス学的再検査でHCV-RNAが著増(108copy/ml)していることが確認された.本症例は自己免疫性肝炎とC型肝炎の関係を考える上で示唆に富む症例と考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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