肝臓
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門脈大循環短絡塞栓術により長期間再発なく,経過観察中の肝性脳症の1例
松岡 利幸早川 勇二高島 澄夫
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1996 年 37 巻 5 号 p. 286-290

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抄録

門脈大循環短絡による,いわゆる猪瀬型肝性脳症に対し,血管カテーテルを用いた短絡路の塞栓術を行い,5年6ヵ月にわたり治療効果が継続中の1症例を報告する.症例は73歳女性.繰り返す意識消失発作の精査中に110~200μg/dlの高アンモニア血症が発見され,門脈大循環短絡による肝性脳症が疑われた.平成元年10月,血管造影にて右結腸静脈下大静脈短絡が認められたため,下大静脈より経静脈的に短絡路にカテーテルを挿入し,右結腸静脈を温存しつつ短絡路のみ金属コイルにて塞栓術を施行した.術後血中アンモニア値は低下し,5年6ヵ月を経た現在まで正常値を維持しており,この間意識消失発作は一度も生じていない.短絡路の塞栓術は手術に比べて侵襲がきわめて小さく,長期間治療効果も持続し,肝性脳症の有用な治療法になり得ると考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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