肝臓
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PCNA抗体およびMIB-1抗体を用いた各種肝疾患における免疫組織化学的検討
悪性度評価への有用性について
岡 芳彦
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1996 年 37 巻 9 号 p. 476-485

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抄録

肝生検で得られた境界病変を含む各種肝疾患組織63症例87切片を用いて細胞増殖マーカーであるPCNAおよびMIB-1による免疫組織化学的染色を施し,生物学的悪性度判定における有用性を検討した.PCNAと比較してMIB-1は核内に明瞭に染色され,かつ背景染色もなく陽性細胞判定は容易であった.非癌肝疾患,肝細胞癌非癌部,境界病変,肝細胞癌の4群に分けると,PCNAでは予想に反して非癌肝疾患の標識率(LI)は全体的に高く,肝細胞癌のLIより高い傾向を示し,境界病変のLIは最も低値を示した.一方,MIB-1では肝細胞癌のLIは非癌肝疾患および肝細胞癌非癌部よりも有意に高く,分化度が低下するにつれて高値を示した.境界病変のLIは非癌肝疾患と肝細胞癌の中間に位置した.LIが3.8%をこえた症例は,境界病変の1例を除くと全て肝細胞癌の症例であった.MIB-1染色において高いLIを示す症例は厳重な経過観察の必要があると考えた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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