1997 年 38 巻 6 号 p. 386-392
症例は21歳, 男性. 1995年5月, 感冒様症状が出現し, 近医を受診. 肝機能障害を指摘され治療を受けるも軽快せず, 当院を紹介された. 入院時血液生化学検査ではGOT 3, 569U/l, GPT 3, 262U/l, 総ビリルビン値3.5mg/dl, プロトロンビン時間活性 (PT) 37.2%と著明な肝機能障害を認め, また白血球数は500/mm3と著明な低下を示した. 骨髄像では細胞数は減少していたが, 腫瘍細胞は認めなかった. ステロイドパルス療法などの治療により, 自・他覚症状ともに改善し退院したが, 同年10月, 再び肝機能障害が出現し再入院した. 第2回入院時に行った肝生検組織像, および骨髄像で腫瘍細胞を認め, 骨髄染色および表面マーカーから急性リンパ性白血病 (ALL) と診断した. ALLに重症肝障害をきたした報告は, 現在までに本症例を含め4例みられるが, 他の3症例では重症肝障害発症早期に死亡しており, 長期間にわたり経過を観察し得たのは本例のみであった.