1999 年 40 巻 4 号 p. 253-259
症例は29歳の女性, 門脈圧亢進症を合併した先天性肝線維症例である. 7歳時に汎血球減少と巨脾よりBanti症候群疑いの診断で脾摘術, 12歳時に胃静脈瘤破裂により経胸経腹食道離断術・胃上部血行遮断術を受けたが, 今回, 胃静脈瘤破裂により再度胃上部血行遮断術が施行された. 本症例の肝病理組織像は7歳, 12歳, 29歳時いずれも門脈域の線維化と胆管の増生を認めたが, 炎症性変化, 肝硬変症でみられるような偽小葉形成がなく, 先天性肝線維症に合致する病理組織所見であった. 先天性肝線維症例で門脈圧亢進症状により3度の開腹手術を施行され, 長期的に肝病理組織の経過が観察できた症例は希である.