抄録
症例は26歳の性転換願望男性. 吐下血を主訴に来院し, 食道静脈瘤および出血性胃炎を指摘され入院となった. 腹部CT, 超音波検査にて肝硬変および著明な脾腫を認めた. 患者は性転換願望があり中容量ピルを内服し, エストロゲン製剤の注射を頻回に受けていた. また, 常習飲酒家であるが飲酒歴は9年間と短く, また, 積算飲酒量は純エタノール換算で480kgとアルコール性肝硬変としては少量であった. しかし, ウイルス性や自己免疫性の肝硬変は否定的であり, 肝組織像はアルコール性肝硬変の所見であった. 本症例は女性ホルモン製剤を常用しながら飲酒を継続していたことにより急速にアルコール性肝硬変へ進展した極めてまれな症例であり, アルコール性肝障害の発症における性差を考察するうえで示唆に富む症例であると考えられた.