2011 年 53 巻 p. 1-6
イチゴハナゾウムシによる春期の蕾被害の発生状況を,奈良県の促成イチゴ栽培施設とその周辺の野生寄主植物において調査した。越冬成虫は3月下旬から4月上旬に活動を開始し,まず野生寄主のクサイチゴを加害した。その2週間後の4月上旬から中旬に施設内のイチゴへの加害が始まった。4月中旬から下旬にノイバラの着蕾が始まるとこれも加害し,異なる寄主植物を着蕾時期に応じて順次利用していた。施設内のイチゴにおける幼虫発生時期は,野外のクサイチゴよりも早かった。また,イチゴにおける蛹の初確認時期から,第1世代成虫の発生時期は少なくとも4月下旬から5月上旬か,それよりも早いと推定された。イチゴにおける被害密度は年次間差が大きかったが,その原因は不明だった。本種成虫に対する殺虫剤の効果を簡易な室内試験で調査したところ,マラソン乳剤とチアクロプリド水和剤,スピノサド水和剤の効果が高かった。