関西病虫害研究会報
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総説
  • Masahiko Morishita
    2021 年 63 巻 p. 1-11
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    Arthropod pests continue to occur throughout the year by inter-plant movement and dispersal between cultivated host plants that are applied with pesticides and wild host plants that serve as refuges in the area of cultivation. This paper reviews the relationship between the host range and status of pesticide resistance in agricultural arthropod pests in Japan. The decisive factors for determining the development of pesticide resistance were concluded with attention paid to wild host plants as refuges. The arthropod pests that developed pesticide resistance were as follows: (1) monophagous species infesting cultivated crops treated with pesticides, (2) polyphagous species with a host range restricted to cultivated plants lacking wild host plants, and (3) certain populations of polyphagous species develop resistance in habitats such as tea fields and greenhouses with year-round cultivation because they are relatively isolated from the surrounding populations that do not develop resistance due to the abundance of refuges. In all cases, pest populations inhabit environments where they are restricted to mate with the susceptible populations from refuges of wild host plants.

原著論文
  • 辻 元人, 伊達 修一, 田中 沙依, 小野 愛, 木村 重光, 久保 中央
    2021 年 63 巻 p. 13-20
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    根こぶ病は原生生物病原体Plasmodiophora brassicae Woroninによって引き起こされるアブラナ科作物の重要病害の一つである。本研究では,京都府北部地域で採取された褐藻アカモクおよび紅藻オゴノリの海藻粉末による花菜根こぶ病防除効果を露地試験により検証した。またアスコフィラムノドサムを原料とする市販の海藻資材についてもあわせて検証した。1年目は 100 kg/10 aの海藻粉末および資材を定植前の圃場に施用したが,いずれも無処理区と比較して発病度の低下は認められなかった。2年目以降は海藻粉末および資材を含む培土で栽培したセル苗を圃場に移植した。その結果,いずれの処理区においても化学薬剤処理区には劣るものの発病が抑制され,その効果は根こぶ病多発生条件よりも中発生条件で高くなる傾向にあった。底面給液による灌水条件では 1.5%アカモク粉末添加区のセル苗において生育障害が生じたが,ミスト装置による頭上灌水条件では生じなかった。

  • 西 優輔, 長森 茂之, 佐野 敏広, 難波 加奈, 松岡 寛之
    2021 年 63 巻 p. 21-25
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    岡山県内の促成栽培イチゴで採集したナミハダニ黄緑型8個体群に対する殺ダニ剤10剤の殺虫効果,11剤の殺卵効果を調査した。さらに,ビフェナゼート剤とアシノナピル剤に対する各個体群雌成虫の半数致死濃度(LC50 値)を調べ,抵抗性比を求めた。その結果,雌成虫に対する殺虫効果は,エマメクチン安息香酸塩剤,ミルベメクチン剤,クロルフェナピル剤,アセキノシル剤,テブフェンピラド剤,シエノピラフェン剤,シフルメトフェン剤およびピフルブミド剤について,多くの個体群において低かった。アシノナピル剤とビフェナゼート剤の殺虫効果は総じて高かった。2剤のLC50 値を調査したところ,アシノナピル剤は,すべての個体群において抵抗性比が1以下であった。一方,ビフェナゼート剤では,抵抗性比が最大で42.04を示し,感受性低下が疑われた。殺卵効果は,エマメクチン安息香酸塩剤,ミルベメクチン剤,エトキサゾール剤,クロルフェナピル剤,テブフェンピラド剤,シエノピラフェン剤,シフルメトフェン剤およびピフルブミド剤について,多くの個体群で低かった。一方,アセキノシル剤,ビフェナゼート剤およびアシノナピル剤の殺卵効果はほとんどの個体群で高かった。

  • 増井 伸一, 村田 裕行, 土田 祐大, 加藤 光弘, 小林 泉, 猪俣 敏一
    2021 年 63 巻 p. 27-32
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    マルチローター式無人航空機(XAG社製P-20)により散布された液滴の付着性に及ぼす飛行経路と散布粒径の影響を,感水試験紙を用いてカンキツ樹冠内の高さや感水試験紙面の方向別に評価した。その結果,マルチローターは,散布時に植栽列上を直線的な飛行経路をとるよりも樹上を螺旋状に飛行するほうが被覆面積率は高くなり,散布粒径 100~195 μmの範囲では小さいほど被覆面積率が高くなった。また,被覆面積率は樹冠内の付着面の向きや高さによって異なり,これらの要因ごとに飛行経路や散布粒径が被覆面積率に及ぼす効果も異なった。これはマルチローターからのダウンウォッシュやそれが地面から跳ね返った気流が薬液の付着性に寄与するためと考えられた。

  • 井村 岳男
    2021 年 63 巻 p. 33-38
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    オオタバコガ,シロイチモジヨトウ,ハスモンヨトウ,ヨトウガ,ワタヘリクロノメイガの5種について,人工飼料を用いた簡易な殺虫剤感受性検定を試行した。輪切りにして飼育容器内においた人工飼料の上面に,常用濃度に希釈した供試薬剤を滴下して幼虫を投入し,所定の日数が経過してから生死判定を行った。その結果,幼虫の齢期や薬剤の種類によっては共食いがやや多くなる場合もあったが,効果判定には概ね問題がなく,簡易な感受性検定法として利用可能と考えられた。

  • 伊代住 浩幸, 岡本 直哉, 高橋 冬実, 寺田 彩華
    2021 年 63 巻 p. 39-45
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    数種作物について,その栽培がネギ黒腐菌核病菌(Sclerotium cepivorum Berkeley)の菌核に与える影響を評価した。ダイズ,トウガラシ,あるいはトウモロコシの根圏に埋められた菌核の生存率は栽培なしの土壌に埋めた場合に比べて顕著に低下した。また,トウガラシ,サツマイモ,トウモロコシの栽培後土壌ではネギ黒腐菌核病の進展が弱まった一方で,フィルター滅菌した各種土壌の滲出液は菌核からの菌糸伸長や病原力に特に影響を与えなかった。これらの結果は,輪作による黒腐菌核病の軽減に土壌滲出液の理化学性以外の未知の要因が関わることを示唆する。殺菌剤の定植前ネギ苗潅注処理とトウモロコシの輪作を併用した場合には,それぞれ単独で行った場合に比べて顕著に高い防除効果が認められた。以上の結果は,ネギ黒腐菌核病の省力的防除における輪作の推進を後押しするものである。

  • 田中 千晴, 佐々木 彩乃, 笹山 哲央, 小谷 弘哉, 藤澤 英二, 近藤 和夫, 西野 実
    2021 年 63 巻 p. 47-51
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    三重県のゴマ圃場で多発するミナミアオカメムシNezara viridula(Linnaeus)の加害が収量および油脂の成分品質に及ぼす影響を調査した。登熟期間を通して成幼虫10頭/株を加害させたところ,精子実重は顕著に低下し,しぼんだ形状の未熟粒が多数発生した。また,精子実重および粒数の減少は登熟後期よりも登熟初期の加害において顕著であった。精子実の油脂の酸価は登熟後期よりも登熟中期に加害された場合に上昇した。無農薬栽培圃場では開花直後から成幼虫が発生し,開花5週目に成幼虫数は最多となった。

  • 西 優輔, 松岡 寛之, 畔栁 泰典, 難波 加奈
    2021 年 63 巻 p. 53-58
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    岡山県赤磐市で採集したタバコカスミカメに対する農薬57剤(殺虫剤33剤,殺菌剤19剤,展着剤5剤)の影響を虫体浸漬法により評価した。その結果,成虫あるいは幼虫,または両ステージに対する影響がなかった(補正死虫率 30%未満)殺虫剤は,ジアミド系(IRACコード28),一部の殺ダニ剤(IRACコード 10A,20B,25A),その他系統(IRACコード 7C,9B,17,23,29,UNなど)17剤,殺菌剤は15剤,展着剤は2剤であった。影響が小さい(補正死虫率 30%以上 80%未満)殺虫剤は,フェンピロキシメートとブプロフェジンの混合剤,ビフェナゼート,フェンピロキシメート,ピフルブミドとフェンピロキシメートの混合剤,ポリグリセリン脂肪酸エステル,還元澱粉糖化物,脂肪酸グリセリドの7剤であった。殺菌剤は,クレソキシムメチル,フェンピラザミン,テトラクロロインソフタロニトリル(TPN),炭酸水素ナトリウムの4剤であった。展着剤は,ソルビタン脂肪酸エステルとポリオキシエチレン樹脂酸エステルの混合剤,ポリオキシアルキレンオキシプロピルヘプタメチルトリシロキサンとポリオキシアルキレンプロペニルエーテルの混合剤,ポリオキシエチレンメチルポリシロキサンの3剤であった。中程度の影響がある(補正死虫率 80%以上 99%未満)殺虫剤は,ルフェヌロン,メタフルミゾン,調合油の3剤であった。影響が大きかった(補正死虫率 99%以上)殺虫剤は,ペルメトリン,スルホキサフロル,アバメクチン,エマメクチン安息香酸塩,インドキサカルブ,フルキサメタミドの6剤であった。タバコカスミカメに対する影響がない,または小さいと判定された農薬の使用は,本天敵を利用した総合的病害虫管理において推奨できるだろう。

  • 渡辺 秀樹, 小島 一輝, 久冨 茂樹, 嶋津 光鑑
    2021 年 63 巻 p. 59-65
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    近年,施設園芸では気温や相対湿度を連続測定するデーターロガーとセンサーが普及している。そこで,それらのデータを利用して灰色かび病菌による感染の危険度を推定する方法を検討した。気温,相対湿度から飽和水蒸気圧,露点温度を求め,これらと灰色かび病菌の菌糸生育温度適性から導いた調整係数を構成要素として感染有効積算時間を算出した。2018年6月,トマトの栽培温室内に温湿度ロガーを設置し,気温と相対湿度を10分間隔で記録した。同時に,幼果実上に残存した花弁へ灰色かび病菌の分生子を2~3日間隔で接種し,接種花弁における本病の発生を経時的に調べた。その結果,本病の発生は,推定式から算出した直近2日間の感染有効積算時間の増減とよく一致したことから,同積算時間に基づいて感染の危険度を3段階(安全・注意・危険)で評価する指標を作成した。そこで,冬春作型のトマト栽培温室において,本病の自然発生条件下で発病と感染有効積算時間との関係について調べたところ,3回目の危険判定から3日後に初発生が確認された。以上の結果から,本推定式により施設内の灰色かび病菌による感染の危険性を早期に把握することが可能であると考えられた。

  • 中嶋 香織, 川上 拓, 鈴木 啓史, 黒田 克利
    2021 年 63 巻 p. 67-73
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    2016年10月~2019年3月に,施設トマト15圃場から83菌株を採集し,SDHI剤に対する薬剤感受性検定を行った。ボスカリド耐性菌,ペンチオピラド耐性菌の発生が確認され,ペンチオピラド耐性菌はすべてボスカリドと交さ耐性を示した。また,イソピラザムおよびピラジフルミドに対する耐性菌が発生していることを確認した。菌採取した圃場は,イソピラザムおよびピラジフルミドの使用履歴はないため,ボスカリド,ペンチオピラドの散布による交さ耐性が生じている可能性が示唆された。

    SDHI剤の総使用回数が増加するほど,ボスカリドおよびペンチオピラドの耐性菌率が有意に増加した。耐性菌率に関して殺菌剤間にも有意な差が認められ,ボスカリドに対する耐性菌はペンチオピラドに対する耐性菌よりも多く出現した。

  • 山本 みずき, 上田 昇平, 平井 規央
    2021 年 63 巻 p. 75-80
    発行日: 2021/05/31
    公開日: 2021/09/01
    ジャーナル フリー

    本研究では,世界的な農業害虫であるミナミキイロアザミウマThrips palmi Karny 1925 の赤色光に対する誘引抑制効果を検証した。暗室内に設置した透明アクリル容器の内部両端にキュウリ苗を1株ずつ置き,片方の苗には赤色灯と白色灯を(実験区),もう片方には白色灯を照射した(対照区)。中央の放飼台に乗せたキュウリ苗に成虫50個体を放飼し,10日間,両区に移動した個体数を記録した。底面上部に敷く材料や電灯の波長を変えて4種類の実験を実施した。底面上部に何も敷かなかった場合,赤色灯への誘引抑制効果が認められた。底面上部に黒色画用紙およびアルミホイルを敷いた場合,赤色区に移動した個体数は有意に少なく,赤色灯によってキュウリ苗への誘引が抑制される傾向がみられた。赤色灯を橙色灯に替え,底面上部にアルミホイルを敷いた場合,実験区と対照区に移動した個体数に有意差はなかった。本種の赤色光に対する誘引抑制効果を十分に発揮させるためには,底面上部に敷く資材を考慮することが重要であると考えられる。

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