日本火災学会論文集
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論文
防火エア・シャッタに関する研究(1)
林 太郎柴田 優山口 博桜井 寛金原 清之
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1975 年 25 巻 1_2 号 p. 1-15

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抄録

ビル火災の歴史は,諸外国においては古くからあるが,我が国においても近年千日デパートビル火災のような年を追ってしばしば大惨事が生じており,国内外ともに火災一件当りの損害額と死亡率は増加の傾向にあることは周知の事実である。
(1) 最近の火災事例から,現状の防災設備を防火防煙設備,避難設備および排煙設備などに大別してそれぞれの分析を行なった。その検討の結果,近代火災の特徴として気密度の高い建物内部に充満する煙による避難障害,墜落死,中毒死などの死因が急激に増加していることがわかった。そこで火災初期の防煙対策によって災害の防止効果を高めることを目的としてプッシュ・プル方式による防火エア・シャッタを提案した。
(2) 防火エア・シャッタの意義と特性を論じ,従来のエア・カーテンと比較して,防火エア・シャッタを適応した場合の安全率およびその効用などについても述べてある。
(3) 防火エア・シャッタは次式によって設計を行なう。
Q3+Q1 = Q1(2+KD ) = Q1(2+m · KB )   ……………………………………… (1)
KB = KS · {5.8(υ0/υ1)1.4· (H /E )0.25+1} ……………………………………… (2)
KS = (H /E )1.1· {0.46(W /E )-1.1+0.13} {0.04(V /E )0.20+0.51} …………… (3)
ここで Q1:吹き出し流量       m3/min
Q3:吸い込み流量       m3/min
Q0:側風流量          m3/min
υ1:吹き出し速度        m/s
υ0:側風速度          m/s
E :プッシュ開口幅       m
H :設置距離          m
V :プッシュ・フランジ長さ   m
W :プル・フランジ長さ     m
m :破断安全係数
KD :設計流量比
KB :破断限界流量比
KS :しゃ断限界流量比
(4) 次にHVWLQ0などの値が既知のとき,最も経済的な設計を行なうための条件は
∂(Q3+Q1) ⁄ ∂(H /E ) = 0    …………………………………………………… (4)
∂(Q3+Q1) ⁄ ∂(Q0/Q1) = 0   …………………………………………………… (5)
であるから,これらから次式が得られる
H /E = (H /W ) {3.2+√(260(H /W )-1.1+46)}0.91  ………………………… (6)
Q0/Q1 = 0.11(H /W )0.86{3.2+√(260(H /W )-1.1+46)}1.5  ………………… (7)
そこで実際の設計にあたって,(6)(7)式と初期値から υ0/υ1H /EW /EV /E などの値を求め,これらを(1),(2),(3)式に代入すればよい。
(5) “経済的設計法” に基づいて作成したモデルを示した。

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© 1975 日本火災学会
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