一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
61回大会(2009年)
セッションID: 2P-26
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日本,タイにおけるポルトガル由来菓子比較
*宇都宮 由佳スィワナーソン パタニ
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キーワード: 菓子, ポルトガル, 日本, タイ
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抄録

目的:16世紀の大航海時代ポルトガルは,香辛料を求め東アジアへ進出してきた.その際,影響を受けた菓子が今日もなお残っている.東アジアという文化的に相互関連のある地域において,どのようなものが受入れられ,発展または消失していったのか.本研究では,ポルトガルに影響を受けた菓子について,日本,タイで共通または類似したものに焦点を絞り,主材料,用いる道具,作り方をオリジナルと比較する.そして各国の食文化とどのように融合,変容したのかを探る.今回は調理道具に着目した.
結果・考察:調理道具で大きく影響を受けたものはオーブンである.代表的菓子として日本ではカステラ,タイでモーケーンがある.カステラは,小麦粉,鶏卵,砂糖,湯を四角の型へ入れオーブンで焼く.モーケーンも四角の型に入れオーブンで焼くが,材料はペーンマン(キャッサバ芋の粉),アヒルの卵,ヤシ砂糖,ココナッツミルクとなる.希少な小麦粉より豊富なペーンマンを代替したと考えられる.モーケーンのモーとは鍋,ケーンは汁を意味する.現在も調査継続中であるが,モーケーンは元来タイにあり,そこにオーブンが登場し,今日の作り方に変化した可能性もある.
材料で影響を受けたのは「卵」を用いることである.Fios de ovosは,鶏卵素麺(日本),フォイトーン(タイ)となり,特にタイでは宮廷菓子として発展し広く普及した.卵黄液を糸状にする道具は,ポルトガルでは卵殻に穴をあけたもの,日本は竹筒に穴を,タイではバナナ葉を円錐状にしたもの用いていた.現在ポルトガルはステンレス製のジョーロ型となったが,日本,タイはそれぞれ原型に準じた形状となっている.

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© 2009 一般社団法人 日本家政学会
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