目的
大皿,銘銘皿など,食事の提供形態は,複数人で食事を共にするときのコミュニケーションに影響すると考えられる.共食場面において,共有された「大皿」がコミュニケーションの質に与える効果について会話の「盛り上がり」に着目し検討を行った.
方法
分析対象は,女子高生3人グループを対象にした,大皿を囲んだ共食中の映像(30分間)である.なお,食事の際,互いに意見が対立するテーマが与えられ,意見を1つにまとめることが求められた.
分析では,共食中の「盛り上がり」に着目し,その定義を“音声波形のdB値が2秒以上,相対的に高い状態が続いた区間”とした.大皿が盛り上がりに与える影響を検証するため,40箇所の盛り上がりを,誰かが大皿に手を伸ばしている時(大皿アクセス中)と,全員が取り分けた小皿から食事をしている時(大皿アクセス以外)の2つに分類した.さらに,会話内容から「テーマ」,「料理」,「その他」の3つの話題に関する盛り上がりに分類した.
結果
大皿アクセス中では,“料理をうまくよそえない”等のアクシデントが全員に共有され,盛り上がりを誘発していた.盛り上がりの時系列分布を前半・中盤・後半に分けて分析した結果,後半では大皿アクセス中での盛り上がりが大半を占め,テーマに関する盛り上がりも生まれていた.
大皿は,共食において共有空間を形成し,そこで起こるアクシデント(イベント)を共有する役割を有している.大皿アクセスは,イベントとそれを引き金にした盛り上がりを生み,共食全体における盛り上がりの維持に貢献している.本研究を通して,共食における大皿は,コミュニケーションの活性化を促す役割を担っていることが示唆された.