一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
セッションID: 2P-10
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5月28日
高等学校における家庭科教科書の変遷
-被服を中心として-
*小池 真莉子阿部 栄子
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抄録

【目的】 現在、家庭科は男女共修教科であるが、高等学校においては1994年度から男女共修教科として開始した背景があり、それ以前は女子のみに課せられた教科であった。そこで本研究では、高等学校の家庭科の教科書の変遷について、当時使われていた教科書を参照し時代背景もふまえ検討した。 【方法】 高等学校の家庭科教科書を基に、当時の学習指導要領や時代背景もふまえ考察した。 【結果および考察】 戦後の家庭科は、民主的な家族を学ぶ新しい教科として誕生し、小学校から高等学校まで男女共に学ぶ教科であった。1947年度の学習指導要領をみると、高等学校の家庭科は実業科という教科の選択教科の一つとして存在していた。しかし、男女共に学ぶ教科であったにも関わらず、内容では戦前の女子教育で行われていた家事能力の育成が主となっていることが読み取れ、女子が選択することがあらかじめ念頭に置かれていた教科であったといえる。被服製作においても、袷長着や単衣長着などの和服、洋服、下着や布団の製作まで行っており、被服製作にかなりの時間を費やしているだけでなく、当時の高校生の製作技術の高さが伺える。1949年度の学習指導要領の改訂により、家庭科はさらに女子のみ履修の教科としての歩を進め、1960年度の指導要領改訂では、女子のみ必修の教科となった。被服製作においてもワンピースやスカートの製作など女子が履修することを念頭に置かれた内容であったが、1989年度の学習指導要領の改訂で、家庭科は男女共修の教科となり、男女が共に学ぶ家庭科の本来の姿を取り戻した。製作内容は男子生徒も考慮したハーフパンツやエプロンなどの製作が行われているが、授業時間数の影響で被服製作の時間が減少しているのが見受けられる。

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