一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
セッションID: 3P-30
会議情報

5月29日
オボムコイドの相転移現象に及ぼすpH,インキュベーション温度の影響
*芦澤 志保太田 尚子
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

オボムコイドは卵白タンパク質中3番目に多いタンパク質で、卵白タンパク質中約10%を占めている。熱や変性剤などによる変性に対して高い可逆性があることが知られている。また、pH 5.5以下の酸性条件下では90℃以上の加熱処理でも変性しにくいことが分かっている。そこで、本研究では通常種々の起源の食品タンパク質が加熱誘導ゲルを形成すると考えられる総タンパク質濃度10%溶液を用い、pHや処理温度を変化させ、その際のレオロジー特性の変化をいくつかの手法を用いて解析することを目的とした。  試料は、0.2M食塩添加10%オボムコイド溶液pH 5,7及び9の3種類とし、各試料溶液に対する25℃,40℃,60℃及び80℃,30分処理の影響を静的粘弾性測定、超音波分光分析、フーリエ変換赤外分光分析及びネィティブ電気泳動により解析した。  その結果、pH 7及び9での60℃及び80℃処理で、試料粘度のずり速度依存性が増大した。また、これに伴いタンパク質二次構造が変化 (pH 7でのβ-シートの増加や、pH 9での規則構造の減少) した。更に、各試料溶液のネィティブ電気泳動解析により、pH 7,80℃またはpH 9,60℃以上の処理で分子量146kDa以上の可溶性凝集体が形成されていることが判った。  以上のことから、一般に熱安定性が高いとされるオボムコイドタンパク質もpH 7,80℃またはpH 9,60℃以上の処理により高次構造が変化する緩やかな相転移を生じていることが示唆された。また、この際の試料系の変化は超音波減衰をモニターすることでも把握できることが判った。

著者関連情報
© 2011 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top