抄録
目的 圧力鍋は消火後の鍋内圧力が常圧に戻るまで蓋を開けられないため、余熱調理が行われる。これまで加熱時間や調理成績に関する研究はあるが、余熱に関する研究は少ない。そこで本研究では、圧力鍋の余熱効果を根菜類試料の温度と軟化率から検討した。
方法 同一圧力鍋(4L)に水(1.2~2.5kg)を入れて常圧、低加圧(約50kPa/bp約113℃)、高加圧(約80kPa/bp約118℃)で加熱して沸騰直後に消火し、鍋内が70℃までの水温を測定した。水1.2kgに4cm角ダイコン200gを入れて各圧力で加熱し(沸騰継続0~10分)、加熱中及び消火後の水温、試料の中心温度を測定した。中心温度から軟化の速度定数を用いて軟化率を算出した。
結果 消火後100~70℃の間の水温下降速度に圧力による差はなかった。野菜の軟化に必要な80℃以上の時間は、水量1.2kgでは常圧約35分、低加圧約44分、高加圧約48分であり、各圧力とも水量が多いほど保持時間は長かった。ダイコンを加熱し沸騰直後に消火した際の常圧、低加圧、高加圧を比べると、消火後の最大中心温度は各々85.1、93.8、97.6℃、軟化率は消火時でいずれも0.00、余熱利用後は各々0.18、0.63、0.82であった。ダイコンの最適軟化率は0.77であり、常圧では生に近く高加圧では十分に軟化した。消火後の軟化率は加圧程度に応じた余熱効果の差を表した。