一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
69回大会(2017)
セッションID: 2I-09
会議情報

口頭発表 5月27日 被服
良妻賢母による衣生活
大正期の家事労働の観点から
*山村 明子
著者情報
キーワード: 良妻賢母, 大正, 衣生活
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

目的:本研究では家族の衣生活の担い手が主婦であったことに着目し、明治末から大正期にかけての衣生活の変容の背景を検討する。家庭生活における主婦の役割が多様化している今日において、本研究は家庭内の衣生活研究を通して、次世代に心豊かな家庭生活を提言することへの端緒とする。
方法:主な一次史料には当時の婦人雑誌『婦人世界』(1906年創刊)、『主婦の友』(1917年創刊)を取り上げる。これらは良妻賢母思想のもと、家庭における実際的な知識等を掲載し、多数の読者を得ていた。
結果:大正期の新中間層家庭における主婦は、家庭と社会が分断された「おくさん」としての家事行為が求められた。明治末には女中を取り仕切ることが主婦の姿であった(「女中は如何に使うべきか」『婦人世界』1906年10月)が、大正期には女中を使わずに家政を取り仕切れることが良妻賢母の姿(「女中を使はぬのを主婦の名誉とせよ」『主婦之友』1918年10月号)となった。近代の主婦の家事労働において、家族の衣生活を整えることも重要な任務であった。従来の和服を仕立てるさらに仕立て返す衣生活から、主婦の労働力と労働時間を軽減するために、衣類の着数の整理、ミシン利用、洗濯が簡便で仕立て返しが不要な洋服の採用、といった変遷が読み取れる。すなわち主婦の位置づけの変化が家族の衣生活に影響を及ぼしたといえる。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本家政学会
前の記事 次の記事
feedback
Top