【目的】もち性大麦(以下もち麦)はβ-グルカンに富んだ食材で、調理性に関する研究が複数あるが、製パンに用いた際の品種間差やゲル化についての研究はあまりない。そこでもち麦5品種をゲル化して添加した食パンを調製し、どのような差異が現れるかを明らかにすることとした。
【方法】強力粉300g、砂糖15g、食塩6g、脱脂粉乳6g、ドライイースト6g、バター15g、水204gで調製したパンをコントロールとし、強力粉の15%をもち麦ゲルで置換したパンを比較試料とした。もち麦ゲルはもち麦粉750gと蒸留水150gを20分間加熱して調製した。測定項目は発酵増加率、高さ、比容積、色、水分量、かたさ、凝集性、付着性、顕微鏡観察、官能評価とし、24時間および48時間の保存実験も行った。
【結果】発酵試験の結果から、コントロールと比較してフクミファイバーの発酵増加率は低く、キラリモチでは同等、もち絹香、ダイシモチ、はねうまもちでは高かった。焼成後のパンの高さはフクミファイバーで減少し、もち絹香とダイシモチで上昇したことから、生地の特徴と焼成後のパンの関連性が示唆された。クラストの色はゲル化によって濃くなり、クラムの色は原料となるもち麦の色の影響を受けた。比容積は全試料で減少傾向だった。もち麦粉をゲル化したことでクラムに付着性が表れた。官能評価の結果、もちもち感に有意差はなかったが自由記述欄にはもちもち感に関する記述が複数みられた。