1994 年 39 巻 2 号 p. 49-67
代表的な安山岩質火山である桜島の高周波B型地震,低周波B型地震および爆発地震を,波動の特性,震源位置およびモーメント加速度・テンソルについてA型地震と比較検討することにより,火山性地震の発生機構を論じ,それを火山特有の構造である火道と関連させて考察した.高周波B型地震,低周波B型地震および爆発地震は,火口直下の半径約200mの円筒状の領域に分布し,上下方向のダイポール成分が卓越する体積膨張型の力源をもつことから,マグマに満たされた火道内において発生していると推定され,その原因として,火道に沿ったガス相の膨張が考えられる.A型地震は,これら3種類の地震の震源域の周囲に分布し,ダブル・カップル成分が大きいことから,火道周辺の岩石のせん断破壊によって発生すると推定される.高周波B型地震,低周波B型地震および爆発地震のスペクトルの相違は,震源過程の違いによるものと考えられる.これらの地震発生に伴う地盤変動,表面現象および地震発生の時系列から考えると,震源過程の相違は火道上部の閉塞状態やマグマの物性の違いに起因していると推定される.