抄録
設計風速の設定には,設計で想定する再現期間に合わせて,台風モデルを用いたモンテカルロシミュレーションや,過去の気象観測記録に基づく確率・統計的手法が用いられる。これらの手法によって代表風速が求められるが,風速の時間変化までは求められない。現在の規基準類で与えられる設計風速は,最大風速のみであるので,上記のような複雑な評価を行うことは難しい。本研究では,設計風速が台風により決まる場合に,その最大風速だけでなく,長時間に渡る風速の変化をどのように設定するかという問題を検討する。この問題に対応する方法として実観測記録をベースに台風モデルに基づくスケーリングを適用した再現性の高い台風時の風速を合成する方法が松井・大熊他(2009)により提案された。本報告ではこの手法を用い,風向の評価方法,平均化時間の考え方を明らかにしつつ,具体的な設計風速時刻歴生成例を示し,その性質を検討する。