抄録
本研究では疲労破壊による倒壊事故を起こした太鼓山風車を対象に風車発電時の風荷重およびタ ワー高力ボルトの疲労寿命について評価および検証を行った.まず加速度,ひずみおよび回転数, 発電量など計測を行い,これに基づいて実際の制御パラメータを同定したところ,設計指針に定 められる最適制御パラメータではなくブレードのピッチ角度に 8 °のオフセットを導入して運転していることがわかった.次に,一部の高力ボルトの導入軸力が 低下した場合におけるタワー応力と高力ボルトの応力の関係を求めるために三次元 FEM 解析を行い,一部の高力ボルトの軸力が低下した場合にはタワー引張力に対してボルト応力が加 速的に大きくなることを明らかにした.最後に,以上の結果を用いて高力ボルトの疲労評価を行っ たところ,風速場の乱流強度は高力ボルトの疲労寿命に影響を与えるがボルトの軸力低下が大き くない間では 20年の設計寿命を下回ることはないのに対し,高力ボルトの軸力低下が30%を超えると乱流強度 の大きさに関係なく短期間で疲労破壊に至った.