1988 年 42 巻 4 号 p. 477-482
Lactate dehydrogenase (LDH)は, 嫌気的解糖の最後の反応を触媒する酵素であり, 動物では, シトソールあるいは細胞内オルガネラの膜の外表面に付着しているといわれている.今回, 我々は, ニワトリ肝臓から遠心分画により得たライソゾームに富むフラクションにLDH活性を検出した.そこで, LDHのライソゾーム内存在について検討し以下の結果を得た.1. de Duveらの方法で, ニワトリ肝ホモジネイトを分画遠心により細胞分画したところ, "L"フラクション(Light mitochondorial fraction)に, ホモジネイトのLDH活性の約9%が回収された.この活性は界面活性剤存在下でのみ検出された.2. ニワトリ肝ホモジネイトのMetrizamideによる密度勾配遠心分画像において, LDH活性はライソゾームのマーカー酵素であるAcid phosphataseとほとんど同一の沈降パターンを示した.3. Metrizamide密度勾配遠心分画法により分画したニワトリ肝のライソゾームフラクションのLDH活性は0.2% Triton X-100でほぼ完全に可溶化されたが, 0.1 M KClでは全く可溶化されなかった.4. ライソゾームフラクションからのDigitoninによるLDHとAcid phosphataseの可溶化パターンはほとんど同一であった.5. ポリアクリルアミドゲル電気泳動においてライソゾームとシトソールのLDH isoenzymesは同一の泳動パターンを示した.以上の結果はLDHの5種のisoenzymesがニワトリ肝臓のライソゾーム内に取り込まれていることを示唆している.