九州歯科学会雑誌
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Actinobacillus actinomycetemcomitansに感染したマクロファージのアポトーシスにおけるカスペース-3を通じたカスペース-8,-9の関与
原田 依美
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2006 年 60 巻 4.5 号 p. 124-135

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抄録

近年,歯周病原菌によって発症する全身疾患が特に注目され,国内外の研究者から数多くの研究成果が報告されている.なかでも若年性歯周炎や難治性歯周炎の原因菌として考えられているActinobacillus actinomycetemcomitansは,これらの疾患のみならず,全身疾患を引き起こすことが知られている.感染症の成立には,病原微生物が組織に定着し増殖することが必須であるが,これまでの研究でA. actinomycetemcomitansはマクロファージ内に侵入し,アポトーシスを誘導することが明らかとなり,感染症の発症との関わりできわめて興味深い研究テーマとなってきた.そこで本研究では,A. actinomycetemcomitansに感染したマクロファージのアポトーシス誘導の過程におけるcaspase-8およびcaspase-9の関与について検討した.マウスマクロファージであるJ774.1にA. actinomycetemcomitans Y4株を細菌/細胞比5000:1で感染させた.まず,J774.1をcaspase-3,-8,-9阻害剤存在下でA. actinomycetemcomitansと培養し,アポトーシス細胞の出現をフローサイトメーターで検討した.これまでの知見で,caspase-3はcaspase-8およびcaspase-9によって活性化することが知られているので,感染させたJ774.1細胞にcaspase-9阻害剤を添加し,caspase-3の活性化について検討した.興味深いことに,A. actinomycetemcomitans感染マクロファージでは,caspase-8およびcaspase-9を介した経路で別々にcaspase-3が活性化されることが明らかとなった.さらにA. actinomycetemcomitans感染マクロファージ内でcaspase-8およびcaspase-9で活性化されたcaspase-3により細胞内タンパクであるpoly (ADP-ribose) polymerase (PARP)が分解されることが明らかとなった.この結果から,A. actinomycetemcomitans感染マクロファージのアポトーシス誘導時特有の形態変化には,caspase-8,caspase-9およびcaspase-3の活性化が関与していることが強く示唆された.今回の研究で,歯周病細菌A. actinomycetemcomitansが主要な感染防御細胞であるマクロファージをアポトーシスに導くメカニズムの一端が明らかとなった.今後,より詳細な誘導メカニズムを解明していくつもりである.

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© 2006 九州歯科学会
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