九州歯科学会雑誌
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ラット炎症性疼痛の機構に脊髄神経ーグリア相互作用が関与する
山田 史子椎葉 俊司吉田 充広原野 望布巻 昌仁仲西 修 石川 敏三
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2011 年 64 巻 6 号 p. 201-207

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抄録
背景および目的:末梢粗織が傷害されると,脊髄で痛覚伝達物質アミノ酸の過剰な放出を引き金に,いわゆる神経可 塑性となることが示唆されている.そこで,本研究ではラット炎症性疼痛モデルを用い,脊髄シナプス伝達を修飾す るグリア細胞とその活性に関連する酵素阻害薬による疼痛の修飾作用を調べた. 方法:雄SDラットを用い, MO(Mustard oil)末梢皮下注入による炎症性疼痛モデルを用い,疼痛関連薬物の修飾 作用を検討した.疼痛反応は,注入後早期では自発痛を引っ込め行動回数(flinching)で観察し, 24時間後では足底 への熱刺激に対する反応潜時を測定し,疼痛を評価した. MO注入前に, COX-II阻害剤: SC236,p38-MAPK阻害 剤: SB203580, マイクログリア不活性化剤: minocycline, BDNF受容体阻害剤: K252a,をそれぞれくも膜下腔内投 与した. 結果:非治療ラットのflinchingは, MO注入後30分を最大とし,その後減少し8時間でほぼ消失した.薬物投与に より, MO注入後8時間までのflinching総和は, SC236,SB203580, minocycline, K252aではほぽ40-60%の抑制を 示したまた24時間後ではほぼ同程度にPWLの低下を抑制した. 考察および結語:本研究により,ラット炎症性疼痛モデルにおいて,発症初期には脊髄神経系のシナプス伝達を著し く修飾する細胞応答(p38-MAPK活性化)を伴うマイクログリアの活性化の関与が判明したつまり組織損傷後の 難治性疼痛への移行メカニズムには,発症初期に炎症担当細胞マイクログリアの活性化がCOX-II,p38-MAPKの活 性化や, BDNF遊離を伴うことが統合されて起こることが,解明された. このような炎症性疼痛の急性期の治療に は,従来からの抗炎症性薬に加え,抗菌剤minocyclineやBDNFの作用阻害薬の有用性が期待される.
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© 2011 九州歯科学会
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