九州歯科学会雑誌
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支台築造材料および荷重方向の違いが上顎中切歯の応力分布に及ぼす影響
吉田 記代
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2013 年 67 巻 4 号 p. 63-75

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抄録

支台築造処置を行った歯に咬合力が加わると,歯質や支台築造体材料など性質の異なる構造材料間に応力が発生し,この応力が,歯根破折や補綴装置の脱離の原因となる.本研究では,3次元有限要素解析を用いて支台築造材料および荷重方向の違いが上顎中切歯の応力分布に及ぼす影響について検討した.まず,上顎右側中切歯の人工歯から,生体に近似した有限要素解析モデルを構築した.3種の支台築造材料(鋳造支台築造・ファイバーポスト併用レジン支台築造・金属製既製ポスト併用レジン支台築造)について,3方向(口蓋側方向から切端と基底結節最深部との中央部および歯冠切端部へ歯軸に対して45°・歯軸方向)から100Nの荷重を負荷し残存歯質への応力発生について検討した.その結果,歯根尖部に発生する応力は,ファイバーポスト併用レジン支台築造が鋳造支台築造やステンレス鋼ポスト併用レジン支台築造と比較して小さく,歯槽骨縁部にかかる応力は,いずれの支台築造材料においても同程度の応力が発生した.ファイバーポスト併用レジン支台築造では歯槽骨縁部にかかる応力が歯根尖部よりも大であったことから,垂直歯根破折を考慮した支台築造材料としては,ファイバーポスト併用レジン支台築造が適切であると思われる.しかし,水平歯根破折に関してはいずれの支台築造材料でもリスクがあるため,帯環効果を付与した支台歯形成が重要であると考えられた.

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