九州歯科学会雑誌
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臨床で必要な歯内治療の科学的根拠と経験
─根尖病変の治療成績からの考察─
立和名 靖彦
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2014 年 68 巻 2 号 p. 17-22

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抄録
精緻な技能が要求される歯内治療において,科学的根拠を治療に反映させるためには経験を必要とする.また,歯 内治療の科学的根拠は多いとは言えず,経験によって得られる確証も少なからずある.臨床医は経験を積み重ねるこ とによって,より信頼性の高い術式を確立している. そのよりどころは,臨床成績である. 根尖病変治療症例の10年の経過を調べた結果,治癒と判断されたのは70%(抜歯を除くと78%)であった.経過不良例の多くは再治療歯で,特異な根管形態による根管形成不足,根管充塡材の取り残しが原因として挙げられた.根尖病変を原因としない抜歯が9%あった. この結果を基に術式の改善を行った.歯内治療の根幹となる考え方は,①歯質保存を最優先,②抗原の除去,③根 管の封鎖,④再治療を前提,である.また,歯内治療は抗原となる物質の除去が重要であることを再認識する結果となった. 歯内治療の成功率を向上させる為には,長期の臨床経過を検証する必要がある.歯内治療は研究者や臨床医の間で コンセンサスが得られていない点も多く,両者が協力して科学的根拠を得る努力をすることが望まれる.
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© 2014 九州歯科学会
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