九州歯科学会雑誌
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顎補綴治療におけるポイント
槙原  絵理
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2015 年 69 巻 2 号 p. 34-42

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抄録
補綴治療の難易度は,開口障害,残存歯の有無,周囲軟組織の状態に大きく作用される.上顎欠損では,欠損腔の大きさや口腔外との交通の有無,皮膚移植の有無,下顎欠損では,下顎の連続性,下顎偏位なども大きな因子となる.  腫瘍摘出後に生じた上顎顎欠損に対する補綴的対応の主な目的は欠損腔の封鎖であるが,顎補綴装置の製作に際して,欠損腔以外の領域は精度の高い印象採得が必要であり,欠損腔部位は,印象材硬化後に安全に撤去できるよう配慮しなければならない.さらに,可動性皮弁による口蓋閉鎖が行われている場合には,皮弁部に支持を求めることは難しく,筋圧維持などを考慮した義歯研磨面形態を決定する必要がある.  一方,下顎の場合は咬合の確保が大きな目的であるため,下顎骨欠損部は金属プレートや自家骨などを用いて下顎骨の連続性を修復し,その上部は皮弁を用いた外科的顎堤再建が積極的に行われているが,術前と同様の顎運動や咀嚼運動を再現することは非常に困難である.また,皮弁のボリュームや被圧縮性が過大な場合は義歯の装着に大きな障害となり,口腔周囲組織の力学的動態にも大きな変化が生じていることが多い.  我々は,部位により異なる印象材を用いた印象採得を行うとともに,フレンジテクニックを利用してこれらの動態に調和した顎義歯床縁形態,床研磨面形態を付与した顎義歯製作を心がけている.このような処置を行うことで比較的良好な術後経過をたどることもあるが,術後管理を適切に行わなければ,経時的に残存歯の移動,顎堤形態や咬合の変化が起こり,支台装置の破損などにより補綴装置を再製する場合が少なくない.したがって顎顔面補綴治療においては,補綴科医,口腔外科医だけでなく,歯科衛生士,歯科技工士,言語聴覚士などのチームアプローチにより,術前カンファレンスで治療方針を決定するとともに徹底した患者の術後管理を行うことが必要である.
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© 2015 九州歯科学会
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