九州歯科学会雑誌
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口腔内微量元素と齲蝕罹患状況に関するこれまでの研究
渡辺 幸嗣牧 憲司
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2018 年 72 巻 2 号 p. 23-27

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抄録
微量元素は自然界に広く存在し,ヒトの体内においても一定の濃度が維持されている.微量元素の中には,齲蝕との関連性を指摘されているものも存在する.唾液は血漿成分から生成されて口腔内に分泌され,様々な微量元素を含有している.また,エナメル質にも様々な微量元素が含有されており,脱灰によってエナメル質から口腔内へ溶出していく.これまで我々は,酸性環境下において乳歯エナメル質から溶出するアルミニウム濃度と齲蝕罹患状況についての検索や,小児の安静時混合唾液中に含有されるアルミニウムまたは銅濃度と齲蝕罹患状況についての検索を原子吸光光度計を用いて行ってきた.その結果,pH5.5の環境下において,未治療か治療済かに関係なく,齲蝕経験歯の乳歯エナメル質から多くのアルミニウムが溶出することが明らかとなった.また,小児の安静時混合唾液中のアルミニウム濃度は,処置歯を有する小児において有意に高値を示し,小児の安静時混合唾液中の銅濃度は未処置歯を有する小児において有意に高値を示し,その濃度は未処置歯数が多くなるほど上昇することが明らかとなった.これらの結果から,乳歯エナメル質や安静時混合唾液に含有されるアルミニウムや銅などの微量元素濃度は,小児の齲蝕リスクを推し量るうえで有用な指標として活用することができる可能性を秘めていることが示唆された.
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© 2018 九州歯科学会
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