抄録
X線の発見以来、CTを含む数多くのモダリティが開発され、臨床分野における画像診断は必要不可欠
なものとなっており、診断の効率化や診断能のバラツキの低減を目的としたコンピュータ支援診断(CAD:
Computer Aided Diagnosis)が注目されている。CADとは、計算機により医用画像を解析・定量化した
結果を、医師が「第2の意見」として利用するもので、多くの研究者が多方面でのアプローチで開発を
進めている。特に近年では、深層学習(Deep Learning)を含めた機械学習アルゴリズムを駆使した人工
知能(Artificial Intelligence)に関する成果は大きく進展を成し遂げている。本講演ではAI技術の応用例
として主に、1)パノラマ画像からの歯根吸収有無の診断支援法、2)対称性解析法に基づく口唇裂施術
後の定量評価法の2点について、そのアプローチ法の詳細と成果を報告する。
【歯根吸収有無の画像診断法】歯が他の歯との接触や、副甲状腺ホルモンを過剰に分泌するホルモンの問
題などにより、歯の組織の構造を変えてしまうことがしばしば発生する。最悪の場合、抜歯につながる
こともある。歯根吸収の診断では多くの場合、X線撮影や臨床検査で確認されるまで無症状で、危険な
状態まで進行することもある。パノラマX線写真のみでの歯根吸収の検出は難しく、発見が遅れること
があり、診断支援が求められている。そこで、深層学習アルゴリズムを用いたパノラマX線画像からの
歯根吸収のあり/なしの判別を行うCADを構築し、実150例のパノラマX線画像に適用した結果、良好な
結果を得た。
【口唇裂施術後の定量評価法】口唇裂は先天異常の一つとされており、中でも日本人における発生率は多
い。治療は複数回にわたって行われ、左右対称な外鼻形態の形成を目的として治療が行われるが、手術
結果の判断基準は医師の主観に依存したもので、手術部位の対称度合を定量的に判断する必要がある。
一方、ヒトの顔は厳密には左右対称ではないため、対称度計算の基準となる対称軸を精密に検出するこ
とは困難である。そこで本研究では、手術部位の対称性を解析するための顔の対称基準となる基準面を
検出する手法を提案する。まず、被験者の顔を撮影した3次元点群データに対し、顔器官をランドマー
ク点として検出したのち、口唇裂による形態変化の影響が顕著に表れる領域を除外し、鏡像反転し