経済論叢
Online ISSN : 2758-3988
Print ISSN : 0013-0273
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経済思想家としてのルーヨ・ブレンターノ
―経済論と宗教論の双方に見出される共同体的人間観の一貫性―
渡邊 碩
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2025 年 198 巻 p. 1-18

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抄録

本稿は,ドイツ新歴史学派の経済学者ルーヨ・ブレンターノの経済論と宗教論の双方に一貫した思想的特徴が,「共同体的人間観」,すなわち人間の共同性を最重視する社会ヴィジョンである点を論証する。先行研究は,ブレンターノに内在的な視点から,経済思想家としての特質を解明してきたとは言い難い。本稿では,特にブレンターノのカトリック的背景に注目することで,労働組合論などの政策提言から,宗教史論に至るまで,独自の有機的社会観,並びに一貫した問題関心が見出される点を主張する。具体的な分析対象は,1923年に編纂された論文集『歴史の中の経済人』である。同書を執筆背景と合わせて分析することで,「共同体的人間観」を主軸とする思想的特徴を析出することを試みた。また,彼の社会観を重視することで,従来は等閑視されてきたカトリック社会論などの位置づけも考察することができ,19世紀ドイツ経済思想史の全体像に接近し得る点を展望した。

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© 2025 京都大学経済学会
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