経済論叢
Online ISSN : 2758-3988
Print ISSN : 0013-0273
最新号
原 良 憲 教授退職記念號
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
論文
  • 竹中 毅
    2024 年 198 巻 S 号 p. S1-S18
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本稿では,サービスを人間や人工物,制度や文化などを含むある種のシステムとして捉えた上で,そこに含まれる多様な価値をどのように研究できるか議論する。まず,工学や心理学,経済学等,代表的な学術分野において着目されてきた価値の側面とその限界を示す。次に,サービスシステムに含まれる各行動主体にとっての価値を議論することを通して,行動主体間の相互作用を通した機能的価値,心理的価値,経済的価値間での価値変換の重要性を主張する。最後に,新型コロナウイルスがサービス産業に与えたインパクトを考えることを通して,将来に向けて,市場や社会を考慮したサービスエクセレンスに基づく持続可能なビジネスモデルの必要性について議論する。

  • Thi Tuyet Nhung TRAN
    2024 年 198 巻 S 号 p. S19-S30
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    本稿は新興国における小売発展の特徴をサービスイノベーションの観点から考察・理論化する試みである。新興国における小売業の発展は近年顕著であり,小売業態の革新,流通チャネルの構築,歴史的変遷,小売企業の国際化等という多くの観点からは議論されてきたが,サービスイノベーションという観点では十分議論されていない。また,研究対象の主流が先進国であるため,新興国を対象にした研究が不足している。新興国は独自のコンテキストを有しており,先進国に基づいて開発された理論を適用するのではなく,新興国のコンテキストに見合った新しいフレームワーを開発する必要がある。そのため本稿では,特に東南アジアの新興国であるベトナムの小売業を事例に挙げ,サービスイノベーションの観点から考察を行った。その結果,新興国における小売発展の特徴として顧客経験及び価値共創という軸で多くの革新が行われ,近代的小売業と伝統的小売業が共存するデュアルモデルがあることを明らかにした。これにより,新興国における小売発展の特徴について新たな論点を加えることができたと考える。

  • 姜 聖淑
    2024 年 198 巻 S 号 p. S31-S39
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    ホスピタリティ産業のビジネス現場は慢性的に量・質とも人材不足に直面している。近年,人とロボットの役割や効果を考えたサービス労働力へ期待が高まる。そこで,本研究では,宿泊産業を取り巻く働く環境に関する調査を実施した。まず,「職務不満足の発生要因」に関して,“ホテル内部でコントロール可能な領域”として,「組織問題」「人手不足」「接遇問題」「システム問題」が全体の67.8%を占め高く現れた。“ホテル側がコントロールしにくい領域”では「外部環境問題」「顧客態度・対応問題」が現れた。また,転職に影響を及ぼす大きな要因は「接遇(給与)問題」と「業務環境」であることが分かった。最後に,ロボット導入を終えたホテルと希望するホテルともに労働業務を減らす方法として考えていることが分かったが,導入したと答えたホテルが今回調査からは14%に過ぎない。今後ロボットと人間がどう共存し顧客価値を高めるのか,その提案を試みる。

  • 増田 央, Ruilin ZHU
    2024 年 198 巻 S 号 p. S41-S49
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    宗教組織は,現在,観光産業に限らず多くの企業における,不確実性への対処,高度化・複雑化するサービス提供,情報量が拡大するソーシャルメディアの影響など,持続可能性やウェルビーイングを議論する上での重要なパートナーになっている。しかしながら,デジタル化に伴い宗教組織がその活動をどのように拡大しているのかといった,その組織活動の拡大という観点での研究は不十分である。そこで,日本における先端的な活動をする禅宗寺院の関係者に対して,宗教組織におけるデジタル化に関するインタビュー調査と,その質的分析を実施した。結果として,デジタル化に伴う宗教組織の情報発信,サービス,および連携の拡大の観点が抽出できた。寺院におけるデジタル化により,宗教組織の活動の範囲も拡張しており,持続可能性やウェルビーイングの観点がより重視される環境の中での,企業経営の新たな付加価値構築の方向性が得られた。

  • 石尾 和哉
    2024 年 198 巻 S 号 p. S51-S69
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    今日の日本においては物質的な豊かさについては概ね充足感があり,精神的な満足を求める傾向がますます強くなっている。そのためサービス産業においてホスピタリティがさらに重視されると考えられる。今後ますますホスピタリティを確実に安定的に提供できる仕組み作りが重要になってくる。一方,ホスピタリティ・サービスは人的な接客を中心とするため,それに伴う様々な課題に直面するが,その解決のためにAI・DXを活用できる可能性がある。ホスピタリティ・サービスの実現過程は,まず適切なコンテンツの提供によるサービスの基本機能の充足があり,その上で提供者は顧客思いの心を根底に持ちつつ,受容者と適切なコミュニケーションを持つ。それによって,顧客の個別性への対応・価値共創が行われ,ホスピタリティ・サービスが実現される。その基盤の上で,信頼関係を醸成・強化する。このプロセスにおいて,様々なDX・AIによる支援が有効となる。

  • 窪山 哲雄, 本田 路子
    2024 年 198 巻 S 号 p. S71-S86
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    人的資本経営の推進の背景には,サービス経済化の急速な進行に伴う企業の既存の持続的経営パターンへの変革要請がある。その変革は従業員を「資産」ではなく「資本」と看做すこと,より正確には企業経営視点ではなく従業員の自律性を尊重した人材活用への転換を中核として具体化される。本稿の目的はこうした人的資本経営の本質に立脚し,変革を促進する概念フレームワークを提示することである。その概念は,サービス経営における人的資本の重要性を認識する北欧学派の価値共創ロジックを基礎とし,更にそれを補強,拡張して活用する。すなわち人的資本の概念を「自然人」としての従業員及び顧客,そして「法人」としての企業に拡張し,これらの有機的機能に焦点を当て三者鼎立体制による企業価値創造の新たな基盤を示すと共に,そこで求められる雇用システムの変革について具体的構想を提案する。

  • 嶋田 敏
    2024 年 198 巻 S 号 p. S87-S96
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    急激なビジネスの環境変化に対応するには組織のプロセスを再構成する必要があり,プロセス・イノベーションは競争力の源泉とされている。しかしながら,経済的な価値が認識されつつも,プロセス・イノベーションはプロダクト・イノベーションに比べ注目度が低い現状にある。特に,サービス産業など,生産と消費の同時性が顕著に生じる場合には,プロセス・イノベーションとプロダクト・イノベーションとが密接に関連するため,プロセス・イノベーションへの取組は必須となる。本稿では,宿泊産業の事例を基に,サービス・プロセス・イノベーションをサービス・ケイパビリティの観点から捉え直す。顧客接点への技術導入について,産学の共同研究を通じて意図に則したサービス・プロセスの変革が実現された。サービス・プロセス・イノベーションには統合的な資本活用が必要であるとともに,産学の共同研究がその活用能力に貢献することが示唆された。

  • Huy Truong QUANG
    2024 年 198 巻 S 号 p. S97-S121
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    This research presents an analysis of the risks associated with the service-oriented manufacturing supply chain based on the contingency theory. It aims to offer a comprehensive overview of the existing information by identifying and categorising diverse hazards into three primary tiers of risk determinants. The present research utilises a generic Risk Breakdown Structure (RBS) as a foundation but focuses on a particular industrial context to examine and validate hazards identified in the existing literature. Leveraging the Fuzzy Delphi-Analytic Hierarchy Process (AHP) technique, information was gathered from 50 local construction specialists, including government representatives, consultants, contractors, and clients. We propose formulating a comprehensive definition for a service-oriented manufacturing supply chain grounded on its fundamental significance within the contemporary economic landscape. Researchers and practitioners can consider a comprehensive list of seven risk categories: demand, supply, operations, information, finance, time (delays), and external sources (human-made or natural-related). These categories provide valuable insights into potential risks associated with various aspects of a given context. This study is one of the first research endeavours to provide the notion and attributes of the service-oriented manufacturing supply chain. The Fuzzy technique is employed to produce comprehensive and industry-specific Resource Breakdown Structures (RBSs) inside a singular investigation.

  • Dimitris KARAGIANNIS
    2024 年 198 巻 S 号 p. S123-S146
    発行日: 2024/02/28
    公開日: 2024/03/15
    ジャーナル フリー

    Business models in the digital age capture value from innovation and deliver it to customers as an intelligent offering that answers their needs. The interaction with networks of stakeholders that transcend an organization’s borders and work in globally distributed teams is common, driving the need for innovative co-creation and collaboration approaches. In this context, the paper discusses the design phase of innovative business models based on a design thinking concept for physical co-creation and a digital twin concept applied to design thinking itself, as a means to enable collective intelligence. These two dimensions are interrelated and encompass the value of a storyboarding approach based on SAP Scenes using the Scene2Model tool. Transforming tangible artifacts into digital artifacts is a significant benefit for designing innovative business models with the added value of facilitating model dependency and further analysis of models through a specific flavour of digital twin supporting design thinking, as demonstrated by Scene2Model. The approach was evaluated during a workshop for personalized service delivery in the context of Japanese hospitality.

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