結核
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潜在性結核感染症治療終了後の経過観察は必要か?
伊藤 邦彦
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2013 年 88 巻 9 号 p. 653-658

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抄録

〔目的〕潜在性結核感染症(LTBI)治療終了後に現在行われている2年間の定期的経過観察の必要性を評価するため,LTBI治療終了後の結核発病率と発病時期を推定する。〔対象と方法〕結核サーベイランスデータを用いて2008-09年新登録LTBI治療対象者の2011年末までの発病状況を調査する。〔結果〕2008-09年新登録LTBI治療対象者(合計8951例)中,その後2011年末までに活動性結核を発病したと推定されるものが56例特定された。治療中断者まで含めたデータであっても,登録年次次年末までの発病率は全結核で0.57%(51/8951),塗抹陽性肺結核で0.10%(9/8951),全菌陽性肺結核で0.22%(20/8951)であった。治療終了時期の情報のある37例での検討では,治療終了後1年以内に12例,2年目に22例が発病していた。〔考察と結論〕LTBI治療終了後の発病率は低いが,LTBI治療終了後1年目から2年目にかけて発病率が低下する傾向はみとめられなかった。問題とするべきは,LTBI治療終了後管理健診の妥当な期間よりも,LTBI治療終了後の管理健診の必要性そのものである。

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© 2013 日本結核病学会
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