結核
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88 巻, 9 号
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原著
  • 能美 夫彌子, 保坂 公徳, 黒澤 隆行
    2013 年 88 巻 9 号 p. 647-651
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
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    〔目的〕INHに特徴とされる混合型肝障害を臨床的に検討する。〔対象〕過去5年間に入院加療を行った肺結核患者321名のうち,抗結核薬により混合型肝障害をきたした7例(2.1%)を対象とした。〔結果〕男性4例,女性3例,平均年齢66.7(59~85)歳であった。平均body mass index,血清アルブミン値,末梢リンパ球数のいずれかが低下傾向を示す低栄養状態が5例(71.4%)にみられた。4例(57.1%)でBarthel Index低下していた。結核の治療はPZA使用が5例(71.4%),INH使用量が規定の量を上回っていた例が6例(85.7%)あった。抗結核薬内服開始から混合型肝障害発症までの平均期間は28.5日で,2例は15日以内に発症した。2例で総ビリルビン値5mg/dl以上,4例でALTが正常値の3倍以上,かつ総ビリルビン値2mg/dl以上であった。抗結核薬中止後,6例は肝障害が改善したが,1例は肝障害の進行により死亡した。肝機能障害改善例には減感作療法を行い,4例でINH,RFP,1例でINH,RFP,PZAの再投与が可能となった。〔考察〕混合型肝障害のリスクファクターとして,ハイリスク患者に対するPZAおよび,INH投与量や,RFPによるINHの肝毒性増強作用の関与が示唆された。〔結論〕混合型肝障害は時として致死的な経過をたどり,十分な注意が必要である。

  • 伊藤 邦彦
    2013 年 88 巻 9 号 p. 653-658
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕潜在性結核感染症(LTBI)治療終了後に現在行われている2年間の定期的経過観察の必要性を評価するため,LTBI治療終了後の結核発病率と発病時期を推定する。〔対象と方法〕結核サーベイランスデータを用いて2008-09年新登録LTBI治療対象者の2011年末までの発病状況を調査する。〔結果〕2008-09年新登録LTBI治療対象者(合計8951例)中,その後2011年末までに活動性結核を発病したと推定されるものが56例特定された。治療中断者まで含めたデータであっても,登録年次次年末までの発病率は全結核で0.57%(51/8951),塗抹陽性肺結核で0.10%(9/8951),全菌陽性肺結核で0.22%(20/8951)であった。治療終了時期の情報のある37例での検討では,治療終了後1年以内に12例,2年目に22例が発病していた。〔考察と結論〕LTBI治療終了後の発病率は低いが,LTBI治療終了後1年目から2年目にかけて発病率が低下する傾向はみとめられなかった。問題とするべきは,LTBI治療終了後管理健診の妥当な期間よりも,LTBI治療終了後の管理健診の必要性そのものである。

  • 松本 健二, 小向 潤, 笠井 幸, 森河内 麻美, 吉田 英樹, 廣田 理, 甲田 伸一, 寺川 和彦, 下内 昭
    2013 年 88 巻 9 号 p. 659-665
    発行日: 2013年
    公開日: 2016/09/16
    ジャーナル フリー

    〔目的〕ホームレス結核患者の治療成績に関連する要因と服薬支援の状況について検討した。〔方法〕平成19~21年の大阪市におけるホームレスの結核新登録患者433例を対象とした。治療成績に関連する要因として,入院期間,外来治療予定期間,DOTSの型等を検討した。対照として大阪市における平成19~21年のホームレス以外の肺結核新登録患者3047例を用いた。〔結果〕①治療成功と失敗中断における服薬支援等の状況:治療成功は311例で219例(70.4%)が院内DOTSにて入院のまま治療を終了した。失敗中断は48例で35例(72.9%)は自己退院であった。肺結核患者における失敗中断率はホームレス結核患者が11.0%であり,ホームレス以外の結核患者の6.5%に比べて有意に高かった(P<0.001)。②地域DOTSと治療成績:地域DOTS実施は102例で,週5日以上の服薬確認は66例(64.7%)と最も多くを占めたが,失敗中断は10例(9.8%)であった。入院および外来治療予定期間と治療成績では,入院期間は脱落中断が2.0±1.6カ月,治療成功が4.4±2.5カ月であり,外来治療予定期間は脱落中断が7.9±2.7カ月,治療成功が3.6±2.1カ月であり,入院期間の短い例と外来治療予定期間の長い例で脱落中断が有意に多かった(P<0.01)。〔結論〕ホームレス結核患者の失敗中断率は高く,自己退院によるものが多かった。治療成功例では入院のまま治療を完遂することが多く,地域DOTSにつながった例では週5日以上の服薬確認を行っても失敗中断率は高く,特に入院期間の短い例と外来治療予定期間の長い例では十分な支援が必要と考えられた。

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