結核
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Mycobacterium kansasiiは菌種か菌群か, 分子生物学的および疫学的洞察
Enrico TORTOLI
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キーワード: 疫学, 系統発生, 遺伝学
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2003 年 78 巻 11 号 p. 705-709

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抄録

Mucobacterium kansasiiは最もよく知られた一非結核性抗酸菌種であり, “immunocompetent”ならびに“immunocompromised”な患者における疾患の原因菌として注目を惹いている。この菌種にはモルモットに対するビルレンスを異にする2表現型変異株の存在することが1962年に初めて見出された。しかし, 極めて多様性のあることが見出されたのは近年の遺伝学的研究の進歩によるものである。これらの知見の解明には, DNAプローブハイブリダイゼーション, 16SrDNA塩基配列決定法, 内転写スペーサー (ITS) および反復DNAシークエンス多型の諸分析に負うところ大なるものがある。現在M.kansasii にはITSシークエンスおよび異なる制限酵素に基づいた技術により明らかにされた5亜種が認められている。これらのうち, i型はヒトから, ii型は環境ならびにヒトから, 他の型 (iii, ivおよびV型) は環境のみから分離され, 疫学的見地からも異なる。M. kansasiiの分類学の現状の改訂, および異種あるいは亜種への分離が今や必要と思われる。

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